2004年4月ハンギョレ21 506号

平均年俸640万ウォン ‘観客 1千万時代’の映画スタッフたち…
平均年俸640万ウォン ‘観客 1千万時代’の映画スタッフたち…
‘合理的雇用’のための組織的動きが見えてきた

パク・ミニ記者 minggu@hani.co.kr
 
1100万名を超える観客を50余年前の残酷な戦争中に連れていった映画 <太極旗を翻して>は、昨年2月から10月までの9ケ月間、全州・大関嶺・慶州・揚口・全州・太白・陜川など、全国18地域をまわって撮影した. その‘大長征’に参加したスタッフ数は200余名.
彼らはまさにそばで火薬が炸裂して煙が立ちこめた‘戦争跡地’で、ひどく苦労をしながらこの映画を作りだした.
<太極旗…>が、韓国映画最高興行記録を打ち建てて海外市場へ向かっていて、監督や撮影監督, 主演俳優に華麗な照明が降り注ぐ今、彼らはなにをしているだろうか?

△ 映画撮影現場.
映画ブームで、あまりにも多くの人材が現場に押し寄せたのも、スタッフ処遇が合理的に改善されない理由のひとつだ. 徒弟式システムであるチーム別労働と契約も相変らずだ. (写真/ シネ21 オ・ゲオク)

<太極旗…>のスタッフは、どこでなにをしているか
<太極旗…>のあるスタッフは、最近はアルバイトで生活費を稼ぐと言いながら次の作品を待っている. 撮影が終わって、次の作品を始めるまでの8〜9ケ月間は何も収入がないためだ.

“他の映画や広告の仕事でもすればいいところですが, 一人の監督の下でひとつチームとして動かなければならないので、監督様が次の作品を選んで準備している間は仕事ができません. 最近は、広告もプロダクション単位で撮るので、少しの間だけでも混ざって仕事をする場がありません. 周辺の同僚と後輩たちも、洗車場やコンビニエンスストアなどで働いて生活費を稼いでいます.”

<太極旗…>の照明と撮影チームは、この作品全体に対する契約を結んで、チーム別に金を受け取った.
製作に参加したあるチーム3〜4人が8ケ月間で受けとったお金は5500万ウォン, このお金を、ファースト(第1助手)が3千万ウォン, セカンド(第2助手)が1500万ウォン, サード(第3助手)と‘末っ子’(末端助手)が500万円ずつ分けて受けとった.
それさえも <太極旗…>は1級の映画で、撮影期間と回数が他の映画の2〜3倍なので、平均給与に比べてはるかに多くの金を受け取った方だ.
“8ケ月間の苦労は簡単には話すことができません. 平均韓国映画撮影回数の3倍程である136回の撮影をして, 撮影場所が険しく深い山中なので、車で行くことができなくて、装備や荷物を皆手で運びました. 火薬に乾いた葉っぱのようなものを混ぜて次々炸裂させるなかで仕事をしなければならず、危険負担も大きいのです.”
彼はまた
“<太極旗…>のスタッフであるために周囲からは1億〜2億ウォンずつ儲けていると見られるのが本当につらいです. 映画社では精算が終われば50〜100%程度のボーナスを与えるというのだが,減らされるかもしれません. 契約書に正式に書かれていることとも違い、製作者の考え次第なのです. もらえるなら有難く、もらえなくてもどうしようもありません”と辛く話した.

△ <太極旗を翻して> 映画館前の観客たち, 観客1千万時代の韓国映画は、産業化とスタッフの処遇改善などに進む過渡期に立っている.(写真/ キム・ジョンス記者)

インタビューに応じたスタッフたちは、絶対に名前を明らかにしてはいけないと何度も要請した.
映画界が狭くて相変らずある監督の下であるチームとして動く徒弟システムが相変わらずな映画撮影の特性の上、製作社に苦情を言えば永遠に映画を撮ることができなくなるかもしれないという恐れが大きいためだ.
演出と製作部は徒弟システムがかなり崩れて個別的に活動する者が多いが, 撮影・照明などの技術的な部分は相変らず撮影(照明)監督下に4〜5名の助手チームがファースト・セカンド・サード・末っ子式の徒弟システムで活動する.
最近 <シルミド>と<太極旗を翻して>が1千万観客時代を開いてスクリーン占有率も70%以上に沸き上がった韓国映画は‘全盛時代’という修飾語でも不足しているかに見える.
いまや、‘映像時代’として、映画学科入試には学生達が集まり、映画を専攻しない若者達も映画界に駆せ参じ始めたのも、かなり遠い以前からだ.

しかし、現場スタッフの処遇は相変らず劣悪で非合理的だ.
昨年、批評と興行の両方で大成功を収め、540万名以上の観客を集めた<殺人の追憶>のあるスタッフも
“契約書はよく見ることもできず, 監督が助手たちにお金を分配しました. 全国をまわって103回撮影をして、6ケ月もかかったのに、私たちのチームは3千万ウォンを受けとって100万〜1200万円ずつに分けました. 後で映画がヒットしましたが、ボーナスが契約書に書いてあることとも違い、製作社の前作品である<地球を守れ>が損害をかなり出したので与えることができないと言うので、そのまま‘了解’して終わりました” という.

<太極旗…>や<殺人の追憶>のように、映画が大きな成功を収めた例外的な場合でも、スタッフたちが正しい処遇を受けられないのが現実で、スタッフ全体の平均給与や労動條件は苛酷な水準だ.
先月末、韓国映画助監督協会と韓国映画製作部協会, 撮影助手協議会, 照明助手協議会が所属する‘4部助手連合’が156名の現場スタッフを対象に調べた‘映画現場スタッフの勤労条件改善と専門性向上のための研究’資料を見れば、1作品当たりの平均収入は約540万ウォンに過ぎず, 年間平均参加編数と作品当たり平均収入をかけて換算した平均年俸は640万ウォンだ.

△ <太極旗を翻して> 撮影現場のスタッフたち.
映画の大成功にもかかわらず、スタッフたちは撮影が終わった後、アルバイトをしながら生計費を稼がなければならない程、スタッフたちの労動條件は劣悪だ.


苛酷な追加撮影に押し寄せる自己恥辱感
また、映画人材の雇用は90%以上が非正規職で、大部分が作品別契約, 請負契約を結ぶ.
作品別またはチーム別契約が多いというのは、製作社が全く同じお金を与えてはるかに長くより多くの人を使うことができるためだ. 月給で払うとしたら、一ケ月に100万円ずつは与えなければならないが、1作品当たり1チームに3千万ウォンづつで契約すれば、4〜5名の人員を1年以上かかる準備・撮影・後半作業まで、終始雇用できる.
失業状態期間が1年に平均6ケ月以上で, 調査対象者の54.8%がどんな保険の恩恵も享受できず, 賃金未払いなどの被害を経験した比率も72%にもなった.
一日13〜16時間の撮影が39.4%, 16時間以上である場合も34.8%で, 寝ないで25時間以上継続撮影したことがあるスタッフが88%に達する程に労働強度が苛酷だが, 正確な労働時間と期間にともなう契約ではなく、大部分が作品別契約をするため、超過賃金も要求出来ない.
チェ・セギュ撮影助手協会会長は、
“賃金よりもっと重要なことは、撮影時間と期間超過問題”とし、
“40回撮影すると契約しておいて70回撮る映画もあります. 明け方5〜6時に家を出て、夜10時, 11時まで撮影をしていれば、あまりの疲労に、なにを撮っているのかわからなくなる程です. ひどい時は、二日続けて夜を明かして撮影をしたこともあります. 映画がお金を稼ぐことができなくて食えない職業だということはある程度知って入ってきたけれど、映画をきちんと作りたくて辛抱する者たちが多いのに、このような現実で映画を撮るならば自己恥辱感がこみ上がります. 個別契約をして、正確に撮影時間, 回数, 期間などを明示して、これを守らなければなりません”と話す.

映画スタッフたちの労動條件問題に関して声を出し始めたのは、去る2001年、映画スタッフたちがダウム(註:大手インターネットプロバイダ)カフェのオンライン集いである‘鳩の巣’を開いて、大鐘賞授賞式場前でデモを繰り広げる等、活動を始めてからだ.
3年が過ぎた今、これまでの要求で賃金は若干上がったが、最低生計費にも及ばない劣悪な処遇と不合理な労働環境は相変わらずだ.
もっとも大きな理由は、韓国映画が華麗な見かけに比べ、産業システムが正しく整備されなかったし, 相変らず零細な映画社の乱立と予算不足などの問題を抱いているためだ.
<太極旗…>や<殺人の追憶> <シルミド>などを作ったシネマサービスやサイダース, MKバッファロー(カン・ジェクフィルムとミョンフィルムが取引所上場のためにセシンバッファローと合併した会社)等、ビッグ3製作社や、ポム, 魔笛などのいくつかの中堅映画社を除くと、まだ零細な状態で映画を準備する資金を引いてこられずにあきらめて消える映画社があまりにも多い.
1年に用意する映画は200〜300編程度だが、その中で完成される映画は70編あまりだけだ. あとの映画は、企画・準備段階でスタッフたちだけを集めても途中で‘空中分解’その時まで3〜4ケ月, あるいは1年ずつ仕事をしたスタッフたちは、何らの賃金も受け取れずに出ていくしかない.

△ 2001年 大鐘賞授賞式場前で処遇改善を要求してデモするスタッフたち.
彼らが初めて声を出し始めて3年がすぎた今、彼らは用心深く労組結成に向けた第一歩を踏み出そうとしている.(シネ21 ジョン・ジンファン)



‘映画界志望者’過剰が低賃金を呼ぶ?


製作部スタッフたちの集いである製作部協会の クァク・ジョンフン会長は、
“私だけでも、去る5年間に2編の作品を準備していたのに‘空中分解’です. その1年6ケ月は何も無かったかのように, その間の給与は何も受けとることができませんでした.
でも、勤労契約書を書くこともしなかったし、映画界のそのような危険負担を皆知っている現実で、そのままあきらめてしまいました.
昨年、<オグ>のラインプロデューサーとして働いて、14ケ月間で1300万ウォンを受けとりました. 4大保険恩恵もありません. その前に、空中分解する作品まであれば、2年以上稼いた金がそれまでです.
結婚をしないために粘れるのですが、結婚したら無理ですよ. 周囲に結婚したスタッフはほとんどいません”という.

青年フィルムの キム・グァンス代表は
“お金がなくて、お金を払わずに人々を雇用して仕事ができる所が映画界です.
韓国映画産業が大きくなってはいるが、システムが確実に定着出来なかったのです.
米国・日本・ヨーロッパならば、産別労組形式の労組や同業者組合があって確実な予算がなければ仕事を拒否するのですが, 韓国映画労働者はまだそういう組織化された声を出すことができずにいます”と指摘する.

また、完成されて映画館にかかる70編あまりの映画の中でも大ヒットまたは黒字でも出した映画は25%程度で, 残り75%は赤字だ.
映画が完成したとしても、撮影や照明など、あるチームに属す5〜7人が2500万〜4千万ウォン程度の金を受け取るのだが, ‘末っ子’と呼ばれる末端スタッフの場合、1年または1年6ケ月ずつかかる1作品全体に対して300万〜400万ウォンずつ受け取る場合も多い.
それにもかかわらず、各大学の映像関連学科や映画アカデミー卒業生, 単に映画がとても好きで無条件に飛び込んだ人など、数多くの経路で毎年多くの 人員が映画界に入ってくる.
このような労働力過剰は、低賃金日雇いを量産して、専門性を蓄積する機会を遮る.

映画スタッフたちが自身を労働者というよりは芸術家として感じることも、労動條件の改善を遮る一要因だ.
映画<嫉妬は私の力>の製作部だったあるスタッフは、
“‘私はまもなく カン・ウソク, パク・チャンウク, チャ・スンジェ, ホン・ギョンピョのようになるだろう’と考えるのですが、韓国映画製作編数を考慮すると、1年に監督, プロデューサーとしてデビューできる人数は非常に制限されています. このような状況では、スタッフである期間にも基本生活ができる賃金と労動条件を要求しなければならないのですが, 大部分がまもなく脚光を浴びる監督や製作者になるはずだと考えているために団結された声を出せないのです”と話した.

このような問題を解決する対案として、最近、映画スタッフたちの集いである‘4部助手協会’は、労組設立の可能性を用心深く探っている.
先月、研究調査と法律的検討を通し、彼らは“労組法上の勤労者は賃金生活者であるか賃金に準する収入に依存して生活する者を言うため、映画産業従事者たちは労組法の適用を受けるのには何らの問題はない”という結論を得て、長期的に労組結成の動きを始めた.
しかし、すぐに映画スタッフ労組が登場する可能性は低い.
製作部協会 クァク・ジョンフン会長は、
“今は少しずつ方向を定めている段階だが、短期間に労組が結成されるのは大変です.
使用者たちも関心がありませんが、スタッフたち自らも労働者という認識がありません.
窮極的に労働組合または米国式同業者組合(ギルド)形態で、労働者が団結した声を出すべきですが, まだ今の助手連合形態で再教育などを通して専門性を強化しながらそれに合う待遇を要求しなければならないというのがスタッフたちの考えです.
何にしろ、私達が自ら労働者であると認識して要求しなければ、100年過ぎても何も変わらないので、長期的には労組形態に進むことが望ましい”と話す.


スタッフたち, 芸術家か? 労働者か?

青年フィルムのキム・グァンス代表は、“今、韓国映画は産業化へ進む過渡期段階にあります”としながら、2〜3年以後にはシステムが定着しながらスタッフたちの境遇もよくなる”と予測する.
“昨年から韓国映画のキーワードが‘ウェルメイド’(よくできた映画)です.
2〜3年ほど前には、投資社で作品の質を見ずに‘めくら投資’をすることもあって、うまく作ることができなかったコメデイ映画にも多くの観客が集まったのですが、今は映画をきちんと作ってこそ観客が見ます. 観客たちがこれからもそのような映画を願うならば、良い人材を引き込むためにスタッフたちに対する待遇もよくなるはずです.” 彼は“その過程で、スタッフたちが自らを労働者とみなして、標準契約書を作って映画社と合理的な契約をして, 労組を通して労働者の要求を反映しようという努力をしてこそ、スタッフ処遇改善が可能なのです”と強調した.