2009年1月ハンギョレ21 745号

仔牛がファンドに出会って笑う

 [人と社会]
85億ウォン投資し、3年で120億ウォンを作る‘韓牛礼讃 ファンド’… 農家と投資者が共に利得

□ イ・スンヒョク

“韓国固有の牛品種.普通は黄色味を帯びた褐色であり, 性質がおとなしい.”“不特定多数の人から募金した実績配当型の投資基金.”"牝仔牛に投資" "空想が現実に"
それぞれ、韓牛とファンドに関する説明だ.
最先端の金融と古くなった農村風景を思い起こさせるふたつの単語は、互いに交流することもせず, 別段関連もないように見える.
ところが、忠南イェサン・ホンソン地域では韓牛とファンドの出逢いが話題になっている.
いわゆる‘韓牛ファンド’のためだ.
言葉そのまま、投資者から金を受け取って韓牛に投資するファンドなのであるが, この地域の農家所得向上のための新しい実験なので大いなる関心を集めている.


≫ 農家でおっぱいを飲んでいる‘韓牛礼讃 ファンド’の仔牛

韓牛ファンドの開始は、2007年初頭に遡る.
生活協同組合と一部マートに‘韓牛礼讃’というブランド牛肉を納品している忠南イェサン‘シアル牧場’のキム・テジョン(45) 社長がアイデアを出した.
投資者が出したお金で牝仔牛を買入し、農家に委託して飼育するようにして, 仔牛が生まれたらこれを売却して配当金を回収できないだろうかということだった.
お金を稼ぎながら農家も助けることができるという空想とも言える発想だ.
こういう‘空想’は偶然ではなく、ゴールデンブリッジ資産運用関係者に流れていきながら現実化し始めた.
両者が会い、具体的な方案を議論して, 詳細な事業計画書が用意された.
いろいろな投資専門家に意見を聞いた末に、セマウル金庫連合会とメリツ総金から各々100億ウォンと10億ウォンずつ投資するようにした.
韓-米 自由貿易協定(FTA) 交渉が妥結して いくらも過ぎないその年の6月末、いよいよ‘韓牛礼讃ファンド’(公式名称‘GB資募韓牛礼讃特別資産投資信託’)が公式スタートした.


運用期間3年で延べ目標収益率は9%.

2年分の配当金20億ウォンとファンド手数料5億ウォン程はお金を借りる時にまず利子をとれるように別に積み立てしておいた.
110億ウォン中の余り85億ウォンはシアル牧場を経て牝仔牛2750頭を購入(1頭あたり260万ウォン程)するのに主に使われた.
購入された牝仔牛は80余りの農家に委託した.
60%ほどがイェサン地域の畜産農家であり, 30%ほどは近隣ホンソン地域の畜産農家, 残りは忠南 アサン・ダンジン・チョンヤン, 京畿 ヨジュ, 全羅北道 ワンジュなど、全国各地の農家に分配された.
大部分が‘韓牛礼讃’ブランドに加入した農家で, 抗生剤や成長促進剤を使用しないで繊維質が多い草複合飼料を食べさせる.

3年間、この牝仔牛が育って平均2頭づつ仔牛を産むという計算であり, 3年満期時には委託した雌牛2750頭を1頭あたり400万ウォン程で売却して元金110億ウォンを回収した.
生まれた仔牛を売ったお金で3年目の配当金10億ウォンを充当するようにした.
委託農家の収益構造もまた簡単だった.
委託された雌牛が仔牛を産めば、生後6ケ月時点でシアル農場に引き継いで200万ウォンの飼育料を受け取ると約定した.
雌牛が仔牛を産んで6ケ月が流れるまで雌牛と仔牛に使う飼育費が100万ウォン程であることを勘案すれば、仔牛一頭当たり100万ウォンの利益が出るわけだ.
農家当たり平均雌牛30頭が委託されたのだが, 計画通りに3年間で仔牛60頭が生まれるなら6千万ウォン程の収益が出る展望だった.
委託された牛は3年ファンド満期後に400万ウォンでまず購入できる権利まで農家に与えられた.

このように、投資者と委託農家の利益が保障されるシステムを作るのにシアル牧場が橋わたししたのだが, そちらがわにももう一つの利益が与えられた.
‘韓牛礼讃’というブランド牛肉生産基盤拡大にとって大きな助けになるということだった.
無抗生剤・無成長促進剤の原則を守って穀物飼料の代りに繊維質飼料を主に食べさせて高級韓牛肉を生産し、これをアイコープ(ICOOP)生活協同組合などに納品してきたのだが, 飼育頭数を大きく増やす等の規模の経済をなす踏み台としてこのファンドを活用するようになった.


農村の遊休施設・人材を利用して収益

もちろん繁殖牛(売って収益を得る韓牛)に投資する韓牛ファンドは初めてであるだけに, 安全な投資のための退避策も用意された.
伝染病発生と価格下落の危険に対応して家畜共済組合と残存物回収保険に加入したのである.
不意の事故が起こっても最小限元金は確保することができる措置だ.


≫ 韓牛協会 礼山郡支部長であるチェ・ヨンモク氏の畜舎.
彼は2007年下半期に‘韓牛礼讃ファンド’から雌牛20頭の委託を受けて育てているのだが、現在までに13頭の仔牛が生まれた.チェ氏がこの仔牛を返せば、1頭あたり200万ウォンずつを受け取ることになる.


実際、85億ウォンを投資して3年で120億ウォン(元金110億ウォン+3年目配当金10億ウォン)を作ることはまぐれが重ならない限り容易なことではない.
それなら、なぜこのような構造が可能だったのだろうか? キム・テジョン社長は“農村の遊休施設と遊休人材を利用するという点が核心”と説明した.
“どっちみち遊んでいる空の畜舎や既存畜舎の余裕空間を利用して牛を育てるのです.
投資費用が全くいらないということでしょう. 牛は仔牛を産む時は少し注意が必要ですが、基本は朝・夕方に餌だけ与えれば良いのです. 農民たちは元来することをしながら余分な仕事として牛をちょっと飼うようなものなのですが, ここで思ったより大きい付加価値が創出されることでしょう.”

だが、世の中のあらゆることのように、これもまた計画通りになることはなかった.
米国産牛肉輸入が開放されながら国内牛価格が大きく暴落したのである.
また、国際原資材価格上昇と為替レート暴騰により飼料価格が1〜2年間で2倍近くに沸き上がることも. 飼料価格が暴騰しただけに、農民の利益が減少せざるをえない.
それで最近、委託農家では待ち遠しかった仔牛が生まれていたが, 表情が明るいだけではなかった.
シアル農場から韓牛20頭の委託を受けて育てているチェ・ヨンモク 韓牛協会 イェサン郡支部長は
“輸入飼料は1〜2年間で2倍にまで上がった. ここに韓牛価格が暴落し、農家の心配が並大抵ではない”としながら
“委託された牛が産んだ仔牛を出して受け取る200万ウォン中の原価が130万〜140万ウォン水準まで増えそうだ”と話した.


韓牛価格暴落, 飼料価格暴騰は負担

牛価格暴落は事業を主管するシアル牧場にとって大きな負担として戻ってきている.
現在、仔牛の相場は150万〜160万ウォン水準なのであるが、農家から持ってきた仔牛一頭当たり200万ウォンずつ渡すと差額分損が発生するためだ.
だが、シアル牧場では主体準備がされているという.
地域循環型生態畜産を採択して差別化に成功したので, 購入して補給した牛を皆血統登録すれば普通の仔牛に比べて30万〜40万ウォン程高く取引される.
ここに仔牛生産安定制にともなう補助金(仔牛取引価格平均が一定基準金額より少ない場合、その差額を一括的に支給する制度)も出てくる展望であるためにそれほど大きな打撃ではないとのことだ.
だが、順次韓牛が厳しい条件になることに対して飼育農家の表情は暗いばかりだった.
昨年9月頃から委託した牛から仔牛が生まれ始めて、去る年末にはピークを迎え、今年2〜3月からは実際の仔牛引受引継が始まる予定なのであるが, 無事に仔牛が生まれればとても喜んだ以前の姿は見つけるのが難しいらしい.
チェ・ヨンモク支部長は“昨年、韓牛価格があまりにも落ちて、10頭未満で韓牛を育てる農家が韓牛を育てること自体をあきらめるケースが続出している”としながら“政府の関心や支援が切実に必要だ”と話した.
 


キム・テジョン シアル牧場社長 インタビュー

“奨励金支給可否でも明確になれば”


≫ キム・テジョン シアル牧場社長

韓牛は我が国にだけある固有の動物遺伝資源であり、コメの次に大部分の農家で飼育している国家基幹産業でもある.
このような韓牛とファンドを連結するアイデアを考え出して現実化したキム・テジョン シアル牧場社長は前歴が特異だ.
1980年代末〜1990年代初め、パク・ノヘ詩人などと韓国社会主義労働者同盟(社労盟)で活動し, 社労盟が出した<労働解放文学>編集長としての仕事もした.
以後、全国労働組合協議会(全労協)で活動し, 月刊誌<言葉>などに不定期的に文を載せることもした彼は、1995年、忠南イェサンに帰農した.

- どのように韓牛ファンド事業をするようになりましたか.

投資もしながら農民も助けることができる方法として考えたのですが, 本当に偶然にゴールデンブリッジと連結しました.(笑い)

- 農家としては適正収益が保障されるべきですが, 庶民としては韓牛肉があまりにも高いのが事実です. 

そのような点は認めます. まず、米国牛と韓牛は飼育費用が顕著に差があります.
我が国では動物性飼料使用が禁止されていますが, 米国では同じ牛の副産物でなければ動物性飼料を使うことができます.
動物性飼料は一般の穀物飼料に比べて価格は3分の1水準なのですが, 成長は最小1.5〜2倍早くなります. 動物性飼料禁止をどんなに促しても米国が受け入れない理由です.
米国と同じ先進国では、政府補助金が農家収益の相当部分を占めます.
ところが、我が国は農家に補助金がほとんど無しで、そのまま農産物販売を通して利益を得なさいというシステムです.
その上、産地韓牛価格が30〜40%ほど落ちたのに消費者価格は変動がほとんどありません.
流通システムに問題があるということです.
もちろん、農家もより低廉な価格で都市庶民が韓牛を楽しむことができるように生産費を節減するために努力しなければならないと考えます. また、自らそのような努力をしています.

- 政府政策と関連し、希望する点は何ですか.

昨年、ろうそくの灯政局時に政府が米国産牛肉輸入検討をしながら韓牛農家対策として、韓牛品質奨励金を今年から支給して認定農家に対しては親環境職金を支給するとのことでした.
しかし、まだ何らの消息がありません.

- イェサンに帰農することになった契機は何ですか.

士官学校教官をしていた妻の父が6・25時(註:朝鮮戦争)入隊し、40余年間軍にいらっしゃったがYS(註:キム・ヨンサム元大統領)時期に転役しました.
現役最長寿記録で転役直前に将軍へ昇進し、放送にも出ました.
その岳父が老後を送ろうとイェサンに土地を何百坪も買っておいたのですが, 家を建てる手伝いで数ヶ月間を送りました.
その時、イェサンと縁を結ぶことになり、後ほどこちらに帰農をしました.

イェサン=文・写真 イ・スンヒョク記者 hyuk@hani.co.kr