2003年1月週刊東亜 366号

[映画評]‘品行ゼロ’
366号 / 2003.01.02

[映画評]‘品行ゼロ’
メガトン級の笑い爆弾‘ヘソ用心’

最近になって復古風コメディ映画がひとつの流れを形成している.
復古旋風を大々的に起こした先頭走者としては、クァク・ギョンテク監督の‘チング(友人)’を選ぶことができる.
‘チング’は、黒い学生服とローラースケート場, バスの回数券などを動員して、386世代と40,50代の壮年層に懐かしい郷愁を呼び起こした.
以後、登場した映画は‘チング’と同じように、過ぎた時代を背景とするものの、コミック要素を大きく拡大した.
例えば、興行では大きな成果を上げられなかったが、‘海賊,ディスコ王になる’という本格的な復古映画の可能性を見せた作品があった.
この他に、10代の性的好奇心を解きほぐして興行に成功したジョン・チョシン監督の‘夢精期’は、復古風映画が既にひとつの流れとして落ち着いたことを立証してくれた.

このような流れの中で見ると、ジョ・グンシク監督のデビュー作‘品行ゼロ’は、コミック復古風映画の一線を画すると期待される作品だ.
この映画は、とにかくコメディ映画らしく新鮮な笑いをプレゼントするが、その笑いを誘発する装置(理論)が決して抑止されない. この点を理解することは大変重要だ.
2002年に入り、興行を主導している映画, 例えば、‘ライターをつけなさい’‘家門の栄光’‘光復節特赦’のような映画は、皆コメディ映画だ.
‘品行ゼロ’は、このような映画の後をつないでいながらも、自ら明確な差別性がある.
コメディ映画で許され得る荒唐無稽なストーリー設定を最大限に活用している.
といえども、そのような荒唐無稽な状況自体をもう一捻りする.
例えば、特殊効果を積極的に活用し、単にフォームだけを決めればよかった従来の絢爛なアクション場面をそのまま利用しているが、同時にその非現実性を間違いなく暴露してしまう.
映画で、主人公パク・ジュンピル(リュ・スンボム)は、ムンドク高の‘キャップジャン’だ.
彼は、一人でテックォンド部員17人を倒したことのある伝説的な喧嘩屋だ.
ところが、その彼の前に強敵が現れた. やはり、柔道部有段者を一瞬のうちに片づけた怪力の所有者だ. 果して、この二人の強者が正面対立すればどうなるか.
しかし、監督は、この戦い自体より、その裏面に焦点を合わせる.
実際の戦いと、それが伝えられる過程で膨らんだ武勇伝との間の差を、とても鋭利に看破し、それから来る不調和を非常に效果的に活用している.
そうして、自然に観客の笑いを引き出す.

なんとか笑いを絞り出そうとしていた三流コメディ物がすっかり参って脱落する程、観客の目が肥えた状況で、このように水準の高い笑いの技術を見せる‘品行ゼロ’は、当然観客の歓呼を受けるものと見られる.

リュ・スンボムという傑出した男子俳優も際立って見える.
もちろん、彼が出演した映画編数を勘案する時、リュ・スンボムはまだ新人だ.
彼は実兄であるリュ・スンワン監督の長編デビュー作‘死んだり、あるいは、悪かったり’で、はやくから可能性を認められた.
以後、‘ワイキキブラザーズ’で、酒場の従業員役をリアルに消化して人気を呼ぶと、‘ボクスは私のこと’では、脳性マヒ障害者役を本物のように演技することもあった.
しかし、彼はこの作品に出会って、初めて自身のガッツを遺憾なく発散している.
リュ・スンボムは、最近、TVドラマ‘孤独’で、40代の未婚の母を愛する, 反抗期でありながらも慎重な青年役を演じて、自ら均衡をなしているという評を聞いている.
ベテラン演技者 イ・ミスクの相手役を演じても、少しも引けを取らない演技を披露する.
ハンサム型とは道が違うリュ・スンボムは、単独主人公を引き受けた最初の映画‘品行ゼロ’で、ほとんど‘ワンマンショー’に近い演技を繰り広げながら、もう一つの跳躍を試みている.
リュ・スンボムは, 外貌ではなく、持って生まれたガッツと演技力で頂上に立ったソン・ガンホや ソル・ギョンクのような、線の太い演技者たちの後をつなぐという側面で、非常に鼓舞的なことだという.

この映画でジュンピルを思慕する2名の女性キャラクターも、凝視するに値する.
ジョンラン女子高 オ公主派のリーダーであるナ・ヨン役を担って新鮮な演技を見せてくれたコン・ヒョジンと彼女と恋敵関係にあるミン・ヒ役のイム・ウンギョンだ.
コン・ヒョジンもやはり美貌で勝負するよりは、自身だけの個性で位置づけを構築したという点で、女優飢謹に苦しめられている映画界が注目する俳優だ.
興行で惨敗した‘マッチ売り少女の再臨’で高価な授業料を払ったイム・ウンギョンは、この作品に出会って、初めて‘神秘のベール’を気楽に投げ捨てて、自身だけの演技を探していく感じだ.
TTL広告などでの固定されたイメージではなく, 新しいイメージを見せているためだ.
‘2424’のような, 本当に笑わせることもしないコメディ物に食傷気味でもあった私にとっては‘品行ゼロ’の登場はひたすら喜ばしいのみだ.
清算してしまうべきことが多い人々、 年末にこの映画を見ながら思い切り笑ってみるに値する.
 
Tips
笑いの理論

3種類の理論がある.
まず、優越論(superiority theory).
笑いを優越感の表現として理解する規範的理論で、アリストテレスの喜劇論に立った古典的理論だ.
次に、解消論(relief theory).
心理的緊張が解消される瞬間に笑いが発生すると見る理論.
すなわち、ストレスの深刻化はまもなく疲弊した生として帰結になるので、抑圧から抜け出し、精神的エネルギーの浪費を縮めようとするようになる.
そして、不調和論(incongruity theory).
誤解から起因する笑いが主になる.
ロベルト・ベニーニの映画‘ミスター・モンスター’が、その端的な例だ.
(終わり)


キム・シム/ 映画評論家 kimseemoo@hanmail